京都奥丹波カヌレKyoto Okutamba Canele

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京都奥丹波カヌレku-nel 足立龍シェフ

京都奥丹波カヌレは、丹波地方で穫れた食材をトッピング・フィリングに用い、美しく、また食感よく焼き上げたカヌレである。カヌレと言えば1990年代にヒットし、ここ最近もまた注目されるスイーツ。反面、綺麗に焼き上げることが難しいことで識られており、安定した品質を保つことが難しい品目でもある。2021年度のエエもん審査会では、シェフである杉本敬三氏の試食に注目が集まった。目を閉じてゆっくり味わった後、杉本シェフから発せられたのは「うん、とても上手に焼けています!カヌレは数ある焼き菓子の中でも難しいものなんですよ。でも、これはよくできている。美味しい!」という言葉だった。

カリッとした歯触りの後、心地よいもっちりしたクラム(内層)の食感がたまらない。そしてカヌレの縦穴に詰まったフィリングの味わいが、ひとつひとつの個性をクッキリと主張する。大吟醸の酒粕の甘い香りや、上質ななかに懐かしさを感じる丹波大納言小豆の風合い、丹波と言えば、の丹波栗のペースト、日本が誇る抹茶やほうじ茶の香り、、、飽きることなく次から次へと手を伸ばしてしまいそうだ。

この京都奥丹波カヌレを世に送り出したのが、福知山駅の至近にあるku-nel(クーネル)というレストランでシェフとして腕を奮う足立龍(りょう)シェフ。足立さんは地元・福知山の出身だ。京都市内の製菓専門学校を卒業後、大阪の名門ホテルのパティシエ部門で腕を磨いた。その後、満を持して海外に出ようとしていた矢先、行き先の都合で取りやめに。福知山市へ戻り、イタリア料理のシェフの元で、料理修業をすることとなった。

「ほんとうはパティシエとして働きたかったのですが、入ってすぐ、そのシェフが骨折をしてしまい『足立君、料理頼むわ』ということになってしまったんです(笑)」

ただ、料理人としての修業が、逆にパティシエの技術に加え、自分の幅を拡げることにつながったという。また、一度は福知山を離れたことで、見えてきたことがあるそうだ。

「帰ってきて実感したのが、福知山は『美味しい食材の宝庫だ』ということです。野菜や果物、たまごやジビエも、いろんな食材のレベルが高い。これは、外にでたからこそわかったことだと思います。」

そうした修業が実を結び、ku-nelの開業からシェフとして抜擢されたわけだ。

ちなみにエエもん審査員の山本謙治氏(農畜産物流通コンサルタント)は、エエもん認定後の足立シェフを訪ね、ku-nelで食事をしたという。

「Webを観ると、肉料理が看板料理としてに出てくることもあり、豪快な料理をする店かと思っていました。ところが、店の構えもお洒落て美しく、料理もすべて繊細で計算され尽くした味と香りに満ちている。とてもおいしい、という言葉の前に「綺麗な味」という感想を持ちます。これこそパティシエ側から料理人になった足立シェフの表現なんだな、と思いましたね。」

そんな足立シェフがカヌレに取り組んだのは、やはりパティシエ魂を呼び起こされたからだそうだ。

「正直、料理を作りながらも、どこかで洋菓子を作りたいという想いがありました。ちょうど、レストランの方でもお土産に購入していただいたり、通販にも対応できるものをということで、カヌレを製品化しようと考えたんです。」

じつはこの京都奥丹波カヌレ、2021年度のエエもん審査会でデビューしたものと現在のものでは、フィリングの具材が変わっている。9品目で構成されているのは同じだが、じつは2021年度時点のものは、コーヒー豆など、京丹波地域産ではないものも使われていた。

上の写真を観ればおわかりだろうが、コーヒー豆やアーモンド、ピスタチオナッツといった海外から輸入した食材がみられる。その点については審査員一同から「もっと福知山産の食材をトッピングにして欲しい」という要望が出た。

「審査員のみなさんからそう提言をいただいたので、思い切ってリニューアルを試みました。いま出しているバージョンは、9品目のメイン具材がすべて京丹波地区産のものです。小麦粉はさすがに地元産というわけにいかなかったのですが。」

そうしてできた9つのカヌレが下記のラインナップだ。

・丹波のたまご
いわゆるプレーンのカヌレだが、福知山の養鶏業者が採卵した鮮度の高いたまごの風味をダイレクトに味わうことができる。

・黒豆きなこ
丹波産の黒大豆を挽いたきなこのクリームに、黒大豆の甘露煮を混ぜ込み、トップに黒豆を一粒のせた贅沢な一品。

・丹波栗2.0
よく識る生産者が育てた丹波栗を詰めたもの。ダイレクトに栗の旨みを味わってほしいという。

・純米大吟醸
奥丹波の酒造で醸された大吟醸の酒粕と酒を生地に混ぜ込み、甘酒クリームを射込んだトップには和三盆で漬けたショウガを一片。

・抹茶
綾部産の抹茶を、ホワイトチョコと抹茶クリームに合わせている。

・ほうじ茶
京都産ほうじ茶を生地に混ぜ込み、ほのかなミルクティーのような香りが立ちのぼるように。クコの実をコンポートにしたものをトッピング。

・あんことバター
どんな味かは説明不要だろう。ただし餡は丹波産の大納言小豆を用いた高級版だ。

・塩ミルク
丹波産の牛乳を煮詰めたミルクジャムに、丹後で製塩された塩でアクセントをつけた一品。

・いもくりなんきん
カボチャをベースに、甘露煮にしたサツマイモと栗を生地に混ぜ込んで、リッチな風味のあるカヌレに。

これまでのエエもん審査において前例のなかったことではあるが、2021年度に続き、リニューアルということで2022年度も上記のラインナップで出品。見事、エエもんの認定を再度得ることができた。

じつは2023年の4月より、足立さんの挑戦は新たなフェーズに入る。

「ku-nelの目の前にあるビル内に、カヌレ専用工場をオープンします。これまではレストラン厨房内で製造していたのですが、これだとレストランの営業中は製造に携わることが出来ず、またスペースの制約もありました。ただ、このカヌレが現時点でいろんなところから評判を呼んでいて、引き合いが強くなってきました。そうしたことから、思い切って製造拠点を立ち上げ、本格的に京都奥丹波カヌレを独り立ちさせていきたいと思っているんです。」

じっさい、足立さんのもとには「百貨店の催事で出て欲しい」や「うちのバージョンのカヌレをOEM生産してほしい」といった要望が来るようになっている。それはそうだ、このカヌレのおいしさ、レベルの高さは、食べてすぐに感じることができるのだから。

数年後、京都奥丹波カヌレは、福知山、いや丹波地方の洋菓子シーンの中で独自のきらめきを持つ存在になっているのではないか。本気で、そう予想している。

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