京の極Kyo no Kiwami

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有機JAS認証コシヒカリ
京の極山下 晴生さん

京の極は、福知山市でも水質が綺麗で、夏はホタルが観られる小牧地区の田圃で、有機栽培されたコシヒカリのお米である。第2回のエエもん審査会において、山下さんが炊いてくれたご飯と塩むすびを食べて、審査員一同がその透明感のある、雑味のない美しい味わいに感動した。そんなおいしいお米を栽培する山下春生さんは、じつは福知山出身ではない。愛知県で生まれ育った山下さんがこの小牧地域に惚れ込んで移住し、取り組んだことで生まれたのがこのお米なのだ。

愛知県出身の山下さんは、高校時代から農業の世界に魅せられ、海外青年協力隊として農業指導することを夢見ていた。ところが、腰の持病もあってその夢を断念。日本で就農したいと希望するも、農業への新規参入が難しい日本では叶わぬ夢で、一般企業に就職し、20年以上働いてきたという。そんな山下さんの人生が新たな章に突入するのは2011年の東日本大震災がきっかけだ。

「さっきまで普通の暮らしをしていた人達が、一瞬にして命を奪われていくのをみて、自分は悔いを残さないように生きているのか? 僕の人生はこれでいいのか? と自問自答してしまいました。」

そんな時、胸に灯ったのが思春期から持ち続けていた農業への夢だ。一念発起した山下さんは長野県や静岡県、三重県に岐阜県など、農業が有名な地域に土地を探す。そんな中で偶然に出会ったのが福知山だった。

「醸造業を営む友人が「京都の丹波でおいしい黒豆ができる産地があるから、そこで黒豆作ってくれよ」と言うのです。わたしはそれまで、丹波は兵庫県だとばかり思っていました。京都の丹波である福知山のことを知って、この地を観に来たのです。」

そして縁ができたのが、和久川が流れる小牧地区だ。この地域は、豊かで清浄な水が流れる和久川の源流水の質がよいことはもちろん、おいしいお米ができる大事な要素である朝晩の寒暖差が大きいことで識られていた。

「はじめてこの小牧地区でお米を食べた時、そのおいしさに衝撃を受けたんです。わたしは美食家ではありませんが、明らかに味わいが違いました。心の底からここで農業をしたいと思いました。幸いなことに地域の方々が親切にしてくださり、移住できることになったのです。」

山下さんが取り組むのは、日本でも持続可能性の観点から国が振興するようになった有機栽培だ。ご存じだろうが、有機栽培を実践するにはさまざまな困難が伴う。栽培期間の前から、農薬の使用や化成肥料の使用が制限され、細かな記録をとることが求められる。ただ、最初から山下さんは有機栽培または特別栽培を目指して取り組んだ。

「当初は、合鴨を田圃に放して除草してもらうあいがも農法を実践していました。当初からあいがも農法で米づくりをする農家さんに指導していただいていたのです。ただ、3年連続で合鴨がキツネやイタチにやられてしまうことが続いたのです。農薬を使用せずに米を作るには、除草を何かに手伝ってもらわなければ実現しませんが、合鴨の手を借りることは難しい。一時はくじけてしまったのですが、その後、よい除草機を導入することができました。」

最新の機械の手を借りることで、除草の手間をかけることなく有機栽培が可能となった。しかも、あいがも農法からの転換は味の面でも改善がみられた。

「近年、お米を育てる時にできるだけ肥料分を与えない方がおいしいお米になることが知られてきました。余計なチッ素分が入ると、味わいが悪くなるのです。以前は合鴨の糞を肥料としていたのですが、それがなくなったことで、味がクリアになったと思います。」

可能な限り肥料分を抑えて食味を向上するため、イネが最低限欲する天然由来のミネラルと有機質肥料のみを与える。これはもちろん先に書いたような食味をよくするためということもあるが、もう一つの理由は山下さんの信念に基づくものだ。

「福知山に移住して、この素晴らしい自然に感動しました。この自然はこの地域の先祖の方々が残してくださったものです。田圃にはカエルやイモリにタニシが棲んでいます。小川にはアマゴやアユ、エビもいます。そしてこの地域では夏にホタルが観られるんです。ホタルがずっと住み続けられるような綺麗な環境を守らなければならない。そう思って、農薬はもちろん、肥料も流さないことを心がけています。」

環境を汚さないようにイネを栽培するというのは、耳には快く響くが、実際に生産者として行うのは苦労することだ。なぜなら、収穫量が極端に少なくなってしまうリスクがあるのだ。

「通常、日本のお米は10アールあたり530kg程度の収穫が可能です。ところが農薬や化成肥料を使用しないで生産する私の田圃ですと、収穫量は200kgとちょっと、一般的な栽培から比べると半分程度にしかなりません。でも、その分おいしいお米ができると感じています。」

そんな京の極は、日本穀物検定協会の行う検査において「特A」の評価を得ている。
ところで、京の極のおいしさの秘密はもう一つある。それは収穫後の貯蔵段階で食味を上げていくという取り組みだ。

「お米は、0℃以下で凍らずにいられる氷温と呼ばれる温度帯で保管することで、新米のおいしさを長く味わうことができます。これを氷温熟成というのですが、私の自宅の倉庫にはこの氷温貯蔵庫を建てています。ですから、新米の時期だけではなく、1年を通じておいしいお米を食べていただけるのです。」

いかがだろうか。有機栽培のお米は、「有機だから」ということで評価されることが多いが、山下さんの京の極はそれだけではない。小牧地区の清らかな環境を最大限に活かした生産方法に加え、貯蔵技術も含め最適なものを選び、おいしいお米を追求している。審査員の三人は、説明を聞き、ご飯を食べてそのおいしさがずば抜けていることをしっかり確認したからこそ、このお米を評価したのだ。その点では、山下さんの狙いはズバリ、あたっている。

京の極の味わいは、とにかくその清らかさにある。白飯が大好きだ、という方には、ぜひ漬物や味噌など、お米の味わいをフルに引き出すものと合わせて食べていただきたいと思う。その透き通った味わいの背景に、きっと小牧地区の美しい自然風景が見えてくるはずだ。

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