京ほたるKyohotaru Inotinoichi

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京ほたる京ほたる会 芦田 正輝さん

茶碗を持ち、箸で口に運ぶまでの間にも、見た目で「なんと大粒なお米なのか。」と違いがわかる。口に入れ、噛みしめるたびに、そのダイナミックな食感に心が躍る。お米の粒が大きいと言うことは、イコール歯にあたるネットリ感も、そこから染み出てくる甘味も、小さな粒よりも強く感じるということなのだ。心の底からおいしい、ストロングなお米。それが、京ほたる いのちの壱を食べた時の印象だ。

お米という商品は、評価が難しい商品だ。理由はいくつかあるが、お米は全国どこでも栽培されており、差別化が難しいこと。産地名でのブランドが確立されていることが多いため、個人や小規模のグループだと評価されにくいこと。新品種が投入されても、コシヒカリの類似品種が多く、違いを訴求しにくいことが挙げられるだろう。

京都府では、特に丹後地方が特A米の産地として評価されているが、福知山も豊かな水系と、寒暖の差がある山間地があることで、おいしいお米が穫れる産地である。とはいえ、福知山産のお米がすべて美味しいと言うことではない。地域や生産者の技術によって味は変わるのだから当然のことだ。そんな、評価の難しいお米という商品において、京ほたるは審査員三名に「おいしい!」という感動と納得感を与えたのだ。その納得感の源は、二つある。

京ほたる会は、福知山駅から車で30分ほど山間部へ分け入った大内地区を本拠とする。そこにはまずおいしさの理由の一つ目がある。

「京ほたる会には6名の生産者が名を連ねていますが、京ほたる米を栽培する田圃については、おいしいお米ができる、綺麗な水が流れているところだけに限定して栽培をしてもらっています。どの水系がよいのかという具体的な場所については秘密です。」

エエもん審査会での代表の芦田さんの説明に、私たち審査員は「ふうむ」とうなり、そしてそのお米を炊いたご飯をいただいて「ううむ、なるほど!」と膝を打つしかなかった。圧倒的においしいのだが、そのおいしさは近年はやりの、モチモチ甘い、というだけのものではない。なんともいえない清々しさがあるのだが、その理由はそれか、と得心したのである。

水の取り入れ口や、芦田さんが「秘密」という、圧倒的に水質のよい水系の田圃に、無理を言って連れて行っていただいた。

すでに稲刈り後だったのだが、なるほどそこは「隠し田」と言えるような、通常ならここでおいしいお米が取れるだろうかという場所とはひと味違うものであった。

もうひとつ、京ほたるのおいしさの理由がある。それは「いのちの壱」という品種を使用していることだ。お米に関係する者で「いのちの壱」は「龍の瞳」というブランドで有名な品種である。岐阜県の民間育種家がコシヒカリから産み出したもので、お米の粒が通常のコシヒカリの1.5倍ほどもある、大粒の品種である。

写真を観ていただければおわかりだろう、通常のコシヒカリとは粒の大きさがまったく違う。この差は、炊くことでさらに拡がる。

芦田さんはこのお米との出会いについてこう説明してくれた。
「妻と岐阜県の下呂温泉に旅行に行ったときのことです。現地で、あまりにも高い値段で「龍の瞳」というお米が売られていました。同じ稲作農家として気になり、購入して帰りました。炊いて食べてみたところ、驚くほどに大粒で甘くて、とてもおいしい。そこで、この品種を産み出した今井隆さんと出会い、栽培契約を結んでこの地で生産することにしたのです。」

芦田さんが驚いたように、いのちの壱はコシヒカリ系統の品種ではあるものの、その粒の大きさがみてすぐにわかるほどに大きいという特徴を持つ。しっかりとブランド管理されているので、自由に栽培することはできない。栽培契約のハードルは高いが、数年かけてそのハードルをクリアし、この地での生産が始まったのだ。

「京ほたる」ブランドを立てて活動を初めてほどなく、米の卸業者との付き合いが始まり、高品質米として贈答用に販売する等のルートが確立できた。でも、それだけで芦田さんのやる気を満たすことはできない。
「京ほたる米のお米で米粉を造り、米粉ケーキなどの製品を開発したいんです。」
と目をキラキラさせて言う。私たち審査員にもどんどん直接電話をかけてきて「こういうことを考えているんだけど、どうだろう?情報を教えてほしい」という相談をする。

そんな芦田さんの悩みは、なかなか京ほたる米の生産農家や数量を増やすことができないことだ。

「たくさん出荷して欲しいと言われるんだけど、水質のよい、綺麗な水が流れる田圃でないといけませんが、なかなか評価できるところがない。本当はもっと増やしたいんだけど、品質を下げるわけにはいきませんからね。」

芦田さんのやりたいこと、そして悩みは尽きないが、京ほたるの清冽な水で栽培されたクリアな「いのちの壱」は、唯一無二の味わいだ。ぜひ、炊きたてのお米の味わいそのものを感じて欲しい。

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